凪良ゆう『すみれ荘ファミリア』| 優しい花にも毒がある

クロ凪良ゆうさんの本、初めて読んでみたんだ。
……正直、甘く見てたにゃ
SNSや書店で大絶賛されている『すみれ荘ファミリア』。
綺麗な表紙と「ファミリア」という名前に惹かれて手に取った僕を待っていたのは・・・!
🐾 評価ポイント



すみれ荘、という名前から何とも温かい雰囲気を連想していたのですが、人が抱えている悩みや辛さに焦点があたり、割と重い展開が多かったです・・!



あ、久しぶりにAudibleで読んでみたのですが、
ナレーターさんの声色がキャラクターごとに異なり、そのキャラクターの声のように聞こえてきて、どんどん物語に引き込まれました。



こんな人におすすめ!
- ドロドロした人間心理に興味がある人
- 「綺麗すぎる物語」の裏側を覗きたい人
- Audibleで一気に物語に没入したい人
- 100%のハッピーエンドで癒やされたい人
- リアリティ重視で、設定の甘さが気になる人
- 読後に「胃もたれ」したくない人



綺麗に見えるものにも毒がある。むしろきれいすぎる方が猛毒かもしれない。そんな心理描写を垣間見れるおどろおどろしい本です。
ほのぼの系が読みたい、という方には向かないかもしれないです。
(相応の覚悟を持って読んでください・・!)



Audibleでしか読んでいないですが、
結構読みやすい&ナレーターさんの読み方が素敵なので、
耳で聞くのもおすすめです!




のんびり暮らしているようにみえても、誰もが悩みを抱えている。
すみれ荘の管理人の和久井さんは、まさに聖人君子。彼が作る温かい朝食と、そこに流れる穏やかな空気感は、一見すると理想の「擬似家族」そのものです。
けれど、物語が進むにつれて住人たちが抱える生々しい悩みが、一つ、また一つと溢れ出してきます。
- みすず:PMS(月経前症候群)で感情を抑えきれない自分に絶望している。
- 隼人:職場のストレスを、自分を大切にしてくれるはずの人へぶつけてしまう。
しんどい時ほど、一番甘えられる相手、自分を大切にしてくれる人に当たってしまう……。そのコントロールできないもどかしさと痛みは、読んでいて胸が締め付けられるほどリアルでした。
物語の中でさらりと流れていきましたが、みすずがバンドマンに貢ごうとするシーンが印象的でした。彼女が吐露した恋愛観は、どこか「推し活」にも似た、自己犠牲的なもの。
「歪んだ(歪められた)恋愛観」というのは、本気で誰かを恋して、そして激しく挫折したときに、その人の心の中で結晶化されるものなんだろうなと感じずにはいられませんでした。
さて、現代はSNSの普及で、他人との距離が時間的にも心理的にも近くなりすぎました。嫌でも他人と関わり続け、見知らぬ誰かからの批判に晒されることもあります。ちょっと前に読んだ本の一節を思い出しました。
悩みは尽きることがありません。だからこそ、和久井さんのように「見返りを求めず、ただ誰かを本気で思いやれる人」が、今の時代に切実に求められているのだと感じました。
歪んだ愛のカタチはどんな形?
本書を語る上で避けて通れないのが、あまりにも「歪んだ愛」の形です。
まず、一悟の母親。彼女は、病弱な一悟に対して「自分が守らなくては」という強烈な使命感を持っていました。しかし、その過剰な母性は、もう一人の息子である央二への無関心という形で影を落とします。
一悟を守るために央二を切り捨て、結果として央二を路頭に迷わせ、施設へと追いやる。「一悟さえ守れれば、他のすべてはどうなってもいい」という母親の偏愛は、央二から「愛」を知る機会を奪い、彼の感情を枯渇させてしまいました。
母親にとっては純粋な「守りたい」という気持ちだったはず。けれど、それが使命感へと変質したとき、はたから見ればあまりにも残酷で歪んだ愛になっていたのです。



善意から生まれる歪みほど、救いがなくて苦しいものはない…。
央二の孤独を思うと、胸が締め付けられるにゃ。
そして、さらに直接的な「歪み」を見せるのが、住人の青子です。 彼女が一悟に向ける独占欲は、もはや恐怖を感じるレベル。虚弱体質の一悟をいたわるフリをして、あえて体に毒となるものを口にするよう誘導する。
「弱っているあなたを、私だけが支えている」という状況を作るための、あまりにも歪んだ自己充足。
物語の終盤で描かれるエピソードは、まさに壮絶の一言です。愛という言葉の裏側に潜む、どす黒い人間のエゴ。その本当の恐ろしさを、ぜひその目で(耳で)確かめてほしいと思います。
- すみれ荘という温かい雰囲気のなかでエグイ人間ドラマが巻き起こる
- 「歪んだ愛」に恐怖し、愛のカタチについて考えたくなる。
- 現代社会にも通じる「つながりすぎる悩み」を考え直すきっかけになる。
- Audible版は、ナレーター陣の熱演によって登場人物の「狂気」がより生々しく伝わってくる。










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